AASは初期設定のままでは何もできません。
AASを効果的に利用するために,授業者はあらかじめ設定ファイルの内容を編集し,目的に合った動作をするように準備しておかなければなりません。
ここでは,設定ファイルで用いることのできる機能について解説します。
AASに登録すると,登録完了メールが送付されます。
AASの登録完了メールには,登録者に専用の設定ファイルが割り当てられます。
AASに登録直後に割り当てられる設定ファイルは,次のような設定になっています。
名簿タブには,IDが「d01」~「d10」,それぞれ「デモ用01」~「デモ用10」という氏名で登録され,パスワードは設定されていない。
学級は「d01」~「d05」が「1組」,「d06」~「d10」が「2組」に設定されている。
「1組/場面」「1組/表示」「1組/一覧」「2組/場面」「2組/表示」「2組/一覧」のタブが用意されている。
1組,2組の場面タブには「気づきのメモ」の場面が設定されている。
設定タブの内容を理解し,変更することで,AASを用いて様々なことが出来るようになります。
名簿タブには,IDが「d01」~「d10」,それぞれ「デモ用01」~「デモ用10」という氏名で登録され,パスワードは設定されていない。
学級は「d01」~「d05」が「1組」,「d06」~「d10」が「2組」に設定されている。
「1組/場面」「1組/表示」「1組/一覧」「2組/場面」「2組/表示」「2組/一覧」のタブが用意されている。
1組,2組の場面タブには「気づきのメモ」の場面が設定されている。
AAS設定シートの「名簿」タブを編集し,AASを利用する学習者(児童や生徒)の名簿を編集してください。
学習者は,ここで設定したIDとPW(パスワード)で認証されます。
デモ用に,初期値としてd01からd10が入っていますが,上書きしてしまって構いません。
それぞれの列の意味は,以下のようになっています。
IDは重複しない一意の値にしてください。
氏名には,名前を入力します。重複があってもかまいません。
PWに,初期パスワードを入力してください。
学習者(児童・生徒)には,最初の授業で初期パスワードを教えてあげてください。
セキュリティは甘くなりますが,空欄にしておいて,学習者に設定させることも可能です。
学習者がパスワードを変更すると,この欄に反映されます。学習者のパスワードは,授業者(教師)から見えることを,学習者に伝えておいてください。
初期値は「1組」「2組」となっており,「1組/場面」「1組/表示」「1組/一覧」及び「2組/場面」「2組/表示」「2組/一覧」に対応しています。
学級は,任意の名前に設定できますが,それに対応した「/場面」「/表示」「/一覧」の3つのタブが必要です。
具体的には,初期設定のように,「1組」と「2組」がある場合は,
「1組/場面」「1組/表示」「1組/一覧」
「2組/場面」「2組/表示」「2組/一覧」
という名前の,6つのタブが必要です。
そうではなくて,「A組」,「B組」,「C組」が学級列にある場合は,
A組用に「A組/場面」「A組/表示」「A組/一覧」
B組用に「B組/場面」「B組/表示」「B組/一覧」
C組用に「C組/場面」「C組/表示」「C組/一覧」
という名前の,9つのタブが必要です。
AASプロジェクトに含めたい学級に合わせた,名簿とタブ名を用意してください。
AASでは,名簿の学級列「1組」の生徒は,「1組/場面」タブから,場面データが読み込まれ,表示されます。
同様に,名簿の学級列「2組」の生徒は,「2組/場面」タブから,場面データが読み込まれ,表示されます。
これにより,AASでは,学級の学習進度に従って,表示する場面を用意しておくことが可能です。
この列にチェックが入っている場面のみが学習者のAASにAASに読み込まれます(表示されます)。
チェックが入っていない場面は,入力されていても,学習者のAASにはAASに読み込まれません(表示されません)。
チェックは,全ての行に入っている必要は無く,場面のどこか1行にチェックが入っていれば,AASに読み込まれます(表示されます)。
これにより,学習者に読み込ませる(表示する)場面を,授業者が選択できます。
もし,全く同じ場面で授業を行いたいという場合は,スプレッドシートの機能を使って,「1組/場面」のセルを「2組/場面」にリンクし,「1組/場面」を変更すれば「2組/場面」に反映されるようにしておけば可能です。
AASへの読み込みは,「現在の場面へ」を押すと,更新されます。
アンケートを2つ用意し,まずは「アンケート1」のみをチェックしておいて,「アンケート1」のみを表示し,タイミングを見て「アンケート1」のチェックを外して「アンケート2」をチェックし,学習者に現在の場面ボタンを押すように伝えることで,「アンケート1」は表示されなくなり,「アンケート2」のみ表示するということができます。
B列には,場面の名前(場面名)を入力します。
場面名が同じ場面に,次の項で説明するC列の部品が表示されます。
A列のチェックが入った場面が学習者のAASに読み込まれ,学習者は場面リストから場面名を選択することで,場面を移動することが可能です。
場面タブには,部品列に,以下に説明する部品を配置するように設定することが出来ます。
部品列は,セルの右端の▼をクリックすると,部品の一覧がリスト表示されるようになっています。このリストの中から部品を選択するのが,部品を配置する,最も簡単な方法です。
AASのボタンエリアに,任意のURLへのリンクをボタンとして表示するための部品です。
学習者がネットを使って調べ学習を行う際に,例としていくつかのサイトを紹介しておくような場合に便利です。
1個右側のセル(図中①)には,ボタンに表示される文字を入力します。
ボタンの色は固定(黄色)です。
表示する文字の色や大きさ,改行位置などを指定したい場合は,このセルにHTML形式で入力します。
2個右側のセル(図中②)には,ボタンのリンク先URLを入力します。
AASの画像エリアに,任意の画像を表示するための部品です。(図中③)
AASの画面では,リンクボタンとして表示されます。(図中①)
学習者がこのボタンを押すと,画像が表示されます。
別の画像ボタンを押すと,別の画像に切り替わります。
複数の画像を同時に表示することは出来ませんが,画像を切り替えて提示することが出来ます。
1個右側のセルには,ボタンに表示したい文字を入力します。
ボタンの色は固定(黄色)です。
表示する文字の色や大きさ,改行位置などを指定したい場合は,このセルにHTML形式で入力します。
2個右側のセルには,表示したい画像について,Googleの画像IDを入力します。Googleの画像IDを調べる方法は「3.2.2.Googleの画像IDを調べる方法」で説明します。
AASで表示する画像は,Googleドライブに,リンクを知っている全員がアクセスできる画像として保存されている必要があります。
3個右側のセルには,画像の説明を入力します。(オプション)
ここに入力された文字列は,画像の左上に表示されます。(図中②)
4個右側のセルには,表示領域の大きさを入力します。(オプション)
width=○○ height=○○ の両方またはいずれかをピクセル単位で指定すると,画像の表示エリアが確保され,画像はその大きさの中で表示されます。(画像は縦横比を維持したまま、表示領域にフィットするように拡大縮小されます。必ず画像全体が見えるように収まるので、表示領域と画像の縦横比が異なる場合は、上下もしくは左右に余白が発生します。)
Googleの画像IDは,次の方法で知ることが出来ます。
Googleドライブから,目的の画像を表示します。
画像が表示されたら,右上の・・・メニューから,新しいウィンドウで開くを選択します。
新しいウィンドウで開いたときのURLを確認します。
確認したURL(https://drive.google.com/file/d/xxx...xxx/view)中のxxx...xxx部分が,Googleの画像IDです。
AASでは,「URL」や「画像」などの部品を用いてボタンを作成した場合,ボタンはブラウザの横幅が許す限り横に何個でも並んでしまします。
「ボタン改行」部品を入れることで,ボタンの並びに強制的に改行を入れることが出来ます。
この部品は,単にボタンの並びに改行を挿入する機能しか無いので,これ以外に指定する項目はありません。
「上テキスト」と「下テキスト」のそれぞれのテキストエリアに指定した文字列を表示します。
「上テキスト」部品と「下テキスト」部品は,表示されるエリアが異なるだけです。
「上テキスト」の表示エリアは,場面選択のすぐ下(図中①)です。
「下テキスト」の表示エリアは,ボタンエリア(画像が表示されている場合は画像エリア)のすぐ下(図中②)となります。
「上テキスト」部品と「下テキスト」部品の表示される順番は,設定ファイルの順番とは関係ありません。
「URL」部品の方が「下テキスト」部品よりも後に設定されていたとしても,「URL」部品の方が「下テキスト」部品よりも画面上では上に表示されます。
1個右側のセルには,テキストエリアに表示したいテキストを入力します。
同じ場面設定に,「上テキスト」部品(「下テキスト」部品)が複数ある場合には,設定ファイルの早い行の部品から表示されます。
このように設定ファイルに「下テキスト1」と「下テキスト2」を入力した場合,上の行に設定している「下テキスト1」が,「下テキスト2」よりも先に表示されます。
「上テキスト」部品と「下テキスト」部品では,設定例のように,HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することが出来ます。
「送信ボタン」部品は,AASの送信ボタンを有効化させる部品です。
AASでは,画面に常に送信ボタンが表示されますが,「送信ボタン」部品を配置しないと,有効化されません。
以下に説明する「入力ボックス」部品や,「スライダー」部品等を配置しても,「送信ボタン」部品が配置され,送信ボタンが有効化されていなければ,学習者はフィードバックを送信できないことに注意してください。
この部品は,単に送信ボタンを有効化する機能しか無いので,これ以外に指定する項目はありません。
「入力ボックス」部品は,学習者が文章を入力する領域(入力ボックス)を提供する部品です。
入力ボックスの左上には,入力ボックスに入力された文字数が表示されます。この文字数には,改行はカウントされません。また,連続する複数の空白はタブは1文字として扱われます。
1個右側のセルには,入力ボックスの見出しとして表示したい文字を入力します。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ます。
2個右側のセルには,入力ボックスの高さの初期値を数字で指定します。例では「5」が入力されています。この数字が大きいほど,最初に表示される入力ボックスの大きさが大きくなります。
入力ボックスは,学習者がボックスの右下をドラッグすることで大きさを変更できます。
「みんなの広場」部品は,みんなの広場を有効にする部品です。
AASでは,「みんなの広場」部品が配置されていない場面では,みんなの広場は「使用しません」という表示とともに無効化されています。
「みんなの広場」部品を指定することで,みんなの広場を有効にすることができます。
1個右側のセルに「匿名」と入力することで,みんなの広場は匿名となります。このセルが空欄の場合は,みんなの広場には投稿者の氏名も含めて表示されます。
AASに,ラジオボタン(選択肢のうち,どれか一つを選択させるボタン)を配置します。
ラジオボタンは,選択肢のうち,必ず一つは選択していないと,送信操作が完了しない仕様となっています。
1個右側のセルに,ラジオボタンの選択肢に対する質問を入力します。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ます。
2個右側のセルからは,ラジオボタンの選択肢を入力します。
選択肢が複数ある場合が普通だと思いますが,3個右側,4個右側と選択肢を入力していってください。
選択肢と選択肢の間の間隔は,AASの実行画面を確認しながら,スペースの数で調整してください。
AASに,チェックボックス(選択肢のうち,複数を選択できるボックス)を配置します。
チェックボックスは,選択肢のうち,必ず一つは選択していないと,送信操作が完了しない仕様となっています。
任意で回答を求める場合は,質問に「(任意)」と明記した上で,選択肢の一つに「回答しない」を設定し,任意の場合はそれを選択させるようにすると良いでしょう。
「チェックボックス」部品の書式は,「ラジオボタン」部品のそれと全く同じです。
1個右側のセルに,チェックボックスの選択肢に対する質問を入力します。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ます。
2個右側のセルからは,チェックボックスの選択肢を入力します。
選択肢が複数ある場合が普通だと思いますが,3個右側,4個右側と選択肢を入力していってください。
選択肢と選択肢の間の間隔は,AASの実行画面を確認しながら,スペースの数で調整してください。
AASに,プルダウン形式のリスト(セレクトボックス)を配置します。AASでは,セレクトボックス内のリストをどれか一つ選択しないと,送信操作が完了しない仕様となっています。
1個右側のセルに,チェックボックスの選択肢に対する質問を入力します。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ます。
2個右側のセルからは,プルダウンリストの選択肢を入力します。
選択肢が複数ある場合が普通だと思いますが,3個右側,4個右側と選択肢を入力していってください。
「ヒント」部品は,ヒントボタンを表示するための部品です。
AASのヒントボタンとは,マウスでそのボタンをクリックしている間だけ,ヒントとなるテキスト(ヒントテキスト)を表示するボタンです。
ヒントテキストは,ボタンからクリックを離してしまうと閉じてしまうので,ヒントテキストを一時的に表示させたいときに有効です。
ヒントテキストを表示したままにするには,ヒントボタンの上でクリックし,クリックしたままの状態でボタンからマウスを離し,ボタン以外のスペースでクリックを離します。
「ヒント」部品は,ヒントを表示させる場合だけでなく,シナリオを切り替えて表示させるときにも有効です。
1個右側のセルに,ヒントボタンの見出しを入力します。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ますが,ボタンの色は決められており,色の指定は無視されます。
2個右側のセルには,ヒントテキストを入力します。
HTMLは使えません。
ここに入力したプレーンテキストが,改行も含めてそのまま表示されます。
「スライダー」部品は,AASにレンジ入力欄(数値を選べるスライダー)を表示するための部品です。
「大きさ」や「速さ」,「割合」のなどを学習者に数値として入力してもらうときに使用します。
AASでは,数値の入力は基本的にこの「スライダー」部品によって行われます。
スライダーの左側には数値を直接入力するための入力ボックスも表示されます。
スライダーで選んだ数値は入力ボックスに反映されます。逆に,入力ボックスに入力した数値は,スライダーに反映されるようになっています。
ざっくりとした数値はスライダーで選択し,正確な数値は入力ボックスに直接入力するといった使い分けをすることが出来ます。
1個右側のセルに,スライダーの見出しを入力します。一つのスライダーはこの見出しで囲まれます。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ます。
2個右側のセルには,スライダーの左に表示される文字を入力します。
HTMLも使えますが,表示が崩れやすいので,どのように表示されるかを事前に確認しながら,気をつけて使ってください。
3個右側のセルには,スライダーの左に表示される文字を入力します。
HTMLも使えますが,表示が崩れやすいので,どのように表示されるかを事前に確認しながら,気をつけて使ってください。
4個右側のセルには,スライダーの最小値を半角数字で入力します。
5個右側のセルには,スライダーの最大値を半角数字で入力します。
6個右側のセルには,スライダーのステップ値を半角数字で入力します。スライダーは,ここで指定した刻み(ステップ)で動きます。
何かの評価をするときに、「0から5の範囲で調整したいが、2.5という刻みで,0,2.5,5の3段階にしたい」という場合などに使えます。
小数点を指定することができるため、step="0.5"とすれば0.5刻みに、step="0.01"とすれば0.01刻みにできます。
7個右側のセルには,スライダーの初期値を入力します。
「合計欄」部品は,画面に表示されているスライダーの合計を表示する欄を表示するための部品です。
スライダーの値が変化操作すると,リアルタイムで合計が表示されます。
複数の「スライダー」部品で割合の数値を選択させ,その合計が100になるように値を決めて,「入力ボックス」部品でなぜそのような割合にしたのかを送信してもらうような場面で有効です。
1個右側のセルに,合計欄の見出しを入力します。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ますが,数字の大きさを変えることは出来ません。
2個右側のセルには,初期値を入力します。
ただし,スライダーを操作した途端に,この初期値はクリアされ,計算された合計が表示されます。
AASでは,スライダーを2次元に拡張して用いることが出来ます。
それを「表スライダー」と呼びます。
1個右側のセルに,表スライダーの見出しを入力します。一つの表スライダーはこの見出しで囲まれます。
HTMLを用いて書式付きのテキストを表示することも出来ます。
2個右側のセルは,表スライダーの1列目の指定か,それ以外の指定かで内容が異なります。
表スライダーの1行目では,列見出しを指定します。
その際,このセル(2個右側のセル)には「表スライダー始め」と入力し,3個右側のセルから順に,列見出しを入力していきます。
列見出しにはHTMLが使えます。
表スライダーの2列目以降の指定では,2個右側のセルは行見出しとなります。
そして,3個右側のセルから,1行目1列目のスライダーの左に表示される文字,
4個右側のセルには,1行目1列目のスライダーの左に表示される文字,
5個右側のセルには,1行目1列目のスライダーの最小値,
6個右側のセルには,1行目1列目のスライダーの最大値,
7個右側のセルには,1行目1列目のスライダーのステップ値,
8個右側のセルには,1行目1列目のスライダーの初期値,
9個右側のセルには,1行目1列目のスライダーの幅を指定し,一つのスライダーの設定は終了です。
ここからさらに,2列目以降のスライダーそれぞれについて指定を繰り返します。つまり,
10個右側のセルには,1行目2列目のスライダーの左に表示される文字,
11個右側のセルには,1行目2列目のスライダーの最小値,
12個右側のセルには,1行目2列目のスライダーの最大値,
13個右側のセルには,1行目2列目のスライダーのステップ値,
14個右側のセルには,1行目2列目のスライダーの初期値,
15個右側のセルには,1行目2列目のスライダーの幅…として,繰り返し指定します。
表スライダーの行数分だけ「表スライダー」部品列を指定し,最後の「表スライダー」部品列が終わったら,
2個右側のセルに「表スライダー終わり」と入力すれば,表スライダーの設定は終了です。